古志YouTube句会(10月)を終えて

今月は一週早い、第3週土曜日の「古志」YouTube句会でした。


特選句から。


鮎落ちて宝暦郡上の立百姓   服部尚子


映画や演劇でも取り上げられる「郡上一揆」を詠んだ句です。


宝暦四年(1754)に始まった一揆ですが、


江戸時代において、政局にもっとも影響した一揆でした。


厳しい年貢の取り立てに反発し、蜂起した郡上の農民たちは、


厳しい弾圧にも屈せず、四年間もの長い戦いの末、勝利します。


その結果、郡上藩主・金森頼錦が改易された上、


幕閣の中枢である老中、若年寄、大目付、勘定奉行にまで責任が及び、


罷免されることになりました。


地方で起きた一揆が、幕政にまで影響を及ぼしたのです。


この政治的混乱のなか、田沼意次が台頭し、老中となるのですが、


江戸時代の大きな転換点となった一揆だったわけです。


掲句ですが、「鮎落ちて」と「立百姓」のコントラストが鮮やかです。

(郡上八幡 Photo by  Canva hawk111)


摘みためし花は七色菊枕   齋藤嘉子


干した菊の花を詰めて枕を作るのですが、


邪気を払い、健康になるといういわれがあります。


掲句、これから菊枕を作ろうというところ。


枕に詰めてしまえば色はあまり関係がないのですが、


だからこそ、なんとも豊かな心持ちになる句です。


色とりどりの菊の花が枕に詰め込まれていくのです。


ハレもケも包みて月の鏡かな   峯岡知枝


「ハレ」は祭りや祝いごとといった非日常。


いわゆる晴れ着、晴れ舞台、などの「ハレ」。


「ケ」は日常のこと。


ふだんのありようです。漢字で「褻」と表記します。


「月の鏡」は月を映した鏡のこととも、


月の光にまばゆく照らされた景色ともとれますが、


後者で読むとすると、


さまざまな瞬間を照らし出してきた月が、


いま月の鏡となって一切を包み込んでいる光景です。


人間の営為のちっぽけさを感じさせてくれます。


新鋭作家による、なんとも神秘的で、なんとも大きな一句です。

(Photo by Canva Sergiy1975)


「古志」YouTube句会は毎月第4土曜日に開催しています。


次回は11月25日(土)です。


充実の句会です。


ぜひご参加ください。

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