福壽 @長崎新地中華街 〜蘇東坡のことなど

長崎の旅、

この日の夜は長崎新地中華街へ。

横浜、神戸と並ぶ、日本三大中華街。


江戸時代、華僑の人々は唐人屋敷に住まうことが義務づけられていましたが、

明治維新をきっかけに、より港に近く便利な場所に移り住んだことが、

長崎新地中華街の始まりだそうです。

夜よりも昼のほうが賑わうようで、早めに閉まっているお店も多かったです。

もちろん中華料理屋さんは数多あるのですが、

中華街の端のほうにある福壽へ。

ずいぶん昔に、たまたま入店して美味しかったことがきっかけで、


長崎に来たときには、いつも訪れているお店です。


とはいえ、今回は長崎に来ること自体、十年ぶりなので、かなり久しぶりの訪問。

後に知りましたが、長崎出身の蛭子能収さんが通っていたお店だそうで、


観光地ながら、地元の常連さんも多いお店です。

相方さんはビール。

私は紹興酒。

まずは前菜三種盛り。

蒸し鶏。胸肉ですが、驚くほど柔らかく旨味を感じます。単品でオーダーすべきでした。

ホッキ貝。こちらも美味。春の季語になっています。

くらげ。夏の季語ですが、食べ物としてはあまり詠まれません。食感がとても良いです。

そしてご存知でしょうか。長崎名物ハトシ

明治時代に中国から伝わったそう。


もともとは卓袱料理などで供される高級料理でした。

いまでは多くのお店で、それぞれの味で提供されていますので、食べ比べができます。

骨付きのからあげ。

塩を付けていただきますが、


東京などではあまり出会わない下味の風味で、


九州出身の私にはどこか懐かしく、

とてもジューシー。骨付きのためか鶏肉本来の旨味も濃いです。


からあげ一つをとっても、地域ごとに色がありますね。

こちら、なんだかわかりますでしょうか?

まず、ぱかっと開きます。

こちらの角煮を・・・

さきほどの白い生地に挟みます。

東坡肉(トンポーロー)の完成です。

蘇東坡が考案したとされていますが、


実際、「食猪肉」という詩を詠んで豚肉を称えています。


  黄州好猪肉    黄州猪肉好し

  價賤等糞土    價賤くして糞土に等し

  富者不肯喫    富者は肯へて喫せず

  貧者不解煮    貧者は煮るを解せず

  慢著火 少著水  慢ろに火を著け 少しく水に著け

  火候足時他自美  火候足る時他自づから美なり

  毎日起来打一碗  毎日起来一碗を打つ

  飽得自家君莫管  自家を飽かり得れば君管すること莫かれ


黄州では豚肉は糞土のように安く、そのため金持ちは見向きもしない。

貧乏人は煮るということを理解していないので、美味しく食べることができない。

豚肉を鍋に入れ、火にかけ、しばらく水で煮て、程よく火が通れば、

おのずから美味しく仕上がるものだ。

私は毎日起きがけに一碗ずつ食べるのだが、

自分が満足できていれば、他人からとやかく言われる筋合いはない。


といった内容です。

それまで価値がなかった豚肉の美味しさを発見し、


さらにはそれを詩にした蘇東坡は、


美食家としても、詩人としても超一流ですね。


しかし当時の人々の目には、変わり者に映ったかもしれません。

皿うどん。

〆のはずでしたが、

これは酒のアテですね。杯が進んでしまいます。

麺は揚げた細麺なので、パリパリの食感。

十年ぶりの福壽でしたので、あらためて美味しく、もはや新鮮な気分でした。

美味しい上に、気取らないお店ですので、ぜひおすすめです。

大谷弘至 official site

俳句「古志」主宰 和光大学俳句部顧問

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