「古志」YouTube句会(3月)を終えて

前後しますが、3月23日(土)は定例の「古志」Youtube句会でした。


特選句からいくつか。

(Photo by Canva)


そこかしこ納屋の隙間の春景色   佐藤光枝


納屋の隙間から明るい春の日差しが差し込んでおり、


そこを覗けば春景色が広がっているのです。


納屋の内の暗さと外の明るさ。


その明暗の対比がうまくいっていると思います。


そして何より待春の思いがしっかり表現されています。


句会ではもちろん匿名ですので、作者は伏せられていますが、


あとで作者が佐藤さんだとわかると、


北国の春だということになり、


いっそう味わいは深くなると思います。


こうしたこともまた俳句という詩型のおもしろいところだと思います。


渡岸寺へつづく轍も水の春   篠原隆子


近江高月の名刹渡岸寺


姉川合戦の戦火に遭うのですが、


地元の信徒たちによって決死の思いで救い出された十一面観音像が有名です。


明治期にはフェノロサにより、その美があらためて評価されました。


そんな渡岸寺へつづく轍。


なんの轍かは読者の想像に委ねられていますが、


はるか時空を超えてつづく信心の轍のように感じられます。


〈水の春〉という季語も近江の春としっくりきますし、


戦火との対比もかすかに感じさせ、一句を重層的なものにしています。


大音声一の倉沢雪崩けり   岡村美沙子


日本でもっとも険しいといわれる谷川岳。


その谷川岳で絶景とされるのが〈一の倉沢〉の残雪。


この句は〈一の倉沢〉の固有名詞が効いています。


とくに一という字が効いています。


続いて、二の雪崩、三の雪崩が起きるかのような、


そんなダイナミックな印象を読者に抱かせるのです。


「古志」YouTube句会は毎月第4土曜日に開催しています。


次回は4月27日(土)です。


ぜひご参加ください。

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