半歌仙「雪ちるや」の巻 連句解説 5(最終回)

連句解説の続きです。いよいよ最終回です。


第八です。


 まだ揺れ続くアレッポの街   りえこ


この半歌仙を巻いたのは昨年の2月のこと。


当時、トルコで大地震が発生し、アレッポの町は大きな被害を受けました。


いま日本では能登半島が大地震の被害に遭い、多くの人が苦しんでいます。


微力ながら自分たちに出来ることを模索しつつ、


一日も早い復旧を祈るばかりです。


前句は月の定座。祭りの後の様子でした。


 神輿が来れば酒を浴びせて   麻衣子

月涼し父の背中で眠りこみ   洋子


しかし、ここにアレッポの句が付くことで、


地震の被災地の様子へと変わり、


月涼し父の背中で眠りこみ    洋子

 まだ揺れ続くアレッポの街   りえこ


哀調を帯びた月になります。


こうして付句によってガラッと変わっていくのが連句の魅力の一つです。


第九ですが、


 まだ揺れ続くアレッポの街   りえこ

こそ泥の愛嬌今は懐かしく     なおよ


アレッポの街で地震被害を良いことに盗みを働くこそ泥です。


こそ泥くらいなので、ひどい盗みではないのでしょう。


〈今は懐かしく〉とあるので、いまは罪を許されている様子です。


続いて第十。


こそ泥の愛嬌今は懐かしく   なおよ

 鶯餅をまたも買ひきて    隆子


和菓子が好物なのでしょうか。鶯餅ばかり買ってくるというのです。


盗まずにちゃんと買ってくるところがポイントです。


花篝あの世のものも呼び出され   嘉子


第十一は花の定座。


篝火に死者たちが呼び出されてくるというのです。


妖しげな桜と炎です。


 鶯餅をまたも買ひきて     隆子

花篝あの世のものも呼び出され   嘉子


亡き人々と鶯餅を食べているような不思議な光景になっています。


そして挙句(揚句)。


 下る石段腰抜けの春   瑠衣


登り慣れない石段で膝が笑い、腰が抜けてしまったのでしょう。


前句とあわせて読むと、


花篝あの世のものも呼び出され  嘉子

 下る石段腰抜けの春      瑠衣


お化けか幽霊を見て驚いて腰を抜かしたことになりますね。


諧謔で一巻を締めくくりとなりました。


いかがでしたでしょうか。


「古志」12月号では他に、


きだりえこさんによる歌仙「新酒の巻」の鑑賞、


齋藤嘉子さんによる歌仙についてのエッセイが掲載されています。


あわせてご覧いただければ、より連句を面白く感じていただけるのではないかと思います。


今回はYouTubeのライブ配信機能を用いて半歌仙を巻きました。


またの機会にぜひご参加ください。

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