「古志」深川句会(9月)を終えて 2
昨日の記事の続きです。
第2句座、席題(花野、新豆腐、鷹渡る)です。
見納めの翁と杜国鷹渡る 大場梅子
芭蕉は鷹の名所・伊良湖崎にて、
〈鷹一つ見付てうれし伊良湖崎〉と詠んでいますが、
そのさい同行案内していたのが愛弟子の杜国です。
それからおよそ5年後の元禄3年、
杜国は34歳の若さで亡くなります。
この句はそうした未来を予感させる詠みぶりです。
豆腐屋の喇叭なつかし新豆腐 安藤文
この日もはるばる佐渡から若い俳人が参加しました。
新豆腐を目の前にすると、
かつてよく聞いた喇叭の音色がなつかしく思い出されるのです。
世代の枠を超えた明快な詠みぶりです。
若いからと言って、なにも無理に若ぶった句を詠む必要はありません。
そのときのおのれの心にかなう句を詠めばいいのです。
鷹柱ほぐれほぐれて渡り出す 金澤道子
当ブログでもおなじみの鳥博士の一句です。
的確な描写ですが、たんに写実的に優れているというだけではありません。
〈渡り出す〉その瞬間を捉えているわけですが、
すこしずつほぐれながら一羽一羽と渡りはじめるその姿に、
別れを惜しむ気持ちがおのずから重なって感じられるのです。
作者の鳥への愛情、鷹への愛情が、言外に滲み出ています。
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