半歌仙「庵の月」の巻 連句解説 3
昨日の記事の続きです。
「古志」9月号掲載の半歌仙「庵の月」の巻の解説です。
すでに第三まで解説しました。
庵の月主をとへば芋掘に 蕪村
鳴くにまかせる蚯蚓七匹 弘至
船はいま野分を連れてあらはれて 隆子
続いて第四ですが、
卓球台で日がなあらそふ 隆子
一日中、飽きもせず卓球で遊んでいるのですが、
船はいま野分を連れてあらはれて 隆子
卓球台で日がなあらそふ 隆子
こうして前句とあわせて読むと、
船中で卓球をしている様子になります。
長い船旅なのでしょう。
乗客か船員か、それは読み手の自由ですが、
いずれにせよ、とてもよく付いています。
三句並べて見てみましょう。(三句の渡り)
鳴くにまかせる蚯蚓七匹 弘至
船はいま野分を連れてあらはれて 隆子
卓球台で日がなあらそふ 隆子
脇(第二句)からもしっかり離れています。
続いて第五です。
白シャツの緩めし襟をぱたつかせ 政治
とても暑そうです。流れる汗も見えてきます。
「表六句(最初の六句)」ではカタカナはなるべく避けますが、
シャツということばはそれほど強いものでもないですし、
日常に馴染んでいることばですので、
今回はいただきました。「白シャツ」は夏の季語です。
卓球台で日がなあらそふ 隆子
白シャツの緩めし襟をぱたつかせ 政治
前句とあわせて読むと、
卓球で汗を流したことになります。
ところが、第六が付くと、
白シャツの緩めし襟をぱたつかせ 政治
虫干し終へし草の標本 まこと
虫干し作業で汗をかいたことになるのです。
うまく転じていますね。連句の面白さの一つです。
牧野富太郎をイメージして詠んだとのこと。
「虫干し」は夏の季語。
卓球台で日がなあらそふ 隆子
白シャツの緩めし襟をぱたつかせ 政治
虫干し終へし草の標本 まこと
以上が表六句です。
次から裏に入ります。
続きはまた明日。
どうぞよき一日をお過ごしください。
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