「古志」郵便句会(6月)を終えて

「古志」郵便句会はオンライン句会に参加できない方々のための郵便による通信句会です。


毎月開催しています。


本日は6月の「古志」郵便句会から特選句をいくつかご紹介します。


つめすぎて何か飛び出す冷蔵庫      藤井洋子


「何か」とぼかしたところがいいですね。


正体・原因をあえて言わない。


何かわからないというほうが、リアルですし、臨場感があります。


読者もじぶんの体験に重ねて、自由に想像することができます。


言いおおせることなく、うまく諧謔の一句に仕立てています。

(写真はkevin  turcios)



戦へば百万本の薔薇崩る         春日美智子


露によるウクライナ侵攻をはじめ、この地球上から戦いが絶える日はありません。


この句も何の戦いかは言っていません。


暗喩(メタファー)として薔薇を使っているため、


しっかりと映像的はありますが、


何の戦いであるかは、読者の想像に委ねています。


昔の騎士の時代の戦いかもしれませんし、


IT戦争かもしれませんし、


女子校のカースト争いかもしれません。


あとは読者が自由に読めばいいのです。


言いおおせない、ということは大事なことだとあらためて感じさせてくれます。


皆まで言ってしまっては、読者の自由を奪ってしまい、


俳句が小さく、窮屈になってしまうのです。


サングラス意気の上がりし気分かな    梶原夕未子


俳句は巧みに詠む必要はありません。


上手く詠めていても、まったく心に響かない句。


そんな句が量産され、ときに評価されてしまっていて、


正直、食傷気味です。


仮に拙くとも、心が伝わればいいのです。


心が通わない俳句は、どんなにみかけが上手でも、いい俳句ではありません。


梶原さんの句は、一見、なんでもない、拙い表現のようにみえますが、


サングラスをかけたときの高揚感をとても端的に表現することができています。


この句は何度味わっても、飽きが来ません。

(写真はYlanite



小町通り一光さんに会へぬ春       土筆のぶ子


「一光さん」は「古志」の自選同人であった故・新倉一光さんのこと。


多くの方に慕われ、鎌倉句会の柱ともいうべき御方でした。


土筆さんも一光さんを慕ったお一人。


思いの深さが伝わってきます。


この句は土筆さんにしか詠めません。


心こそ大事なのだと、あらためて教えてくれる一句です。

小町通り。写真は鎌倉市観光協会「鎌倉観光公式ガイド」より)


現在、「古志」郵便句会下半期の参加者を募集中です。


お近くにオンライン句会に参加できていない方がいらっしゃいましたら、


ぜひお声かけください。


詳細は下記より。誌面7月号「お知らせ」欄でもご案内中です。


ご参加をお待ちしています。

大谷弘至 official site

俳句「古志」主宰 和光大学俳句部顧問

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