「古志」東京句会を終えて(4月) 3
昨日の続きです。
第二句座、席題から特選句をいくつか。
題は「虹」「ヨット」「柏餅」。
(「虹」wikipediaより)
虹といふ得体の知れぬものを恋ひ 西川東久
この句も価値を転倒させています。
虹というと無条件に「美しいもの」という固定観念をもってしまいがちですが、
いわれてみれば、たしかに掴みどころがなく、得体が知れません。
突然現れ、突然消えます。
なにしろ虫でもないのに、虫偏です。
字面からして得体が知れません。
しかし、それでも人は虹を恋うわけです。
なんともあわれです。
実はこの「あわれ」こそが、この句の肝です。
虹のことを得体が知れないというだけでも、
十分、価値を転倒できているので、悪くはないですが、
それだけでは機知の句に終わってしまいます。
たとえば、
虹といふ得体の知れぬものが立つ
これでは「仏作って魂入れず」。
東久さんの句にはきちんと魂が入っています。
虹といふ得体の知れぬものを恋ひ 西川東久
得体のしれない虹を描きながら、それを恋う人間のあわれを詠んでいます。
虹立ちて二上山の君おはす 大場梅子
原句は「虹立ちて二上山の君おもふ」でしたが、
そこにありありと大津皇子が立っていると感じさせるだけでじゅうぶんです。
さきほどの東久さんの句とは逆のパターンです。
抑えの効いた表現だからこそ、余韻が生まれ、
大津皇子の悲劇が時空を越えて胸に迫ってきます。
仏に魂を入れるにも、
彫りの加減はその都度、仏によって異なるということです。
以上、4月の東京句会からでした。
次回の「古志」東京句会は9月30日(土)の予定です。
主宰出席の対面句会は他に「古志」深川句会があります。
こちらは毎週第二水曜日開催です。次回は5月10日(水)。
「古志」のかたであれば、どなたでもご参加いただけます。
「古志」入会ご希望の方は「古志」公式サイトまでお問い合わせください。
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