「古志」東京句会を終えて(4月)
コロナ禍の影響で休止していた「古志」東京句会を再開しました。
深川句会に続き、対面による句会の再開です。
オンライン句会にはオンライン句会の良さがあるように、
対面の句会には対面の句会の良さがあります。
「物の見えたるひかり、いまだ消えざる中に言ひとむべし」
芭蕉の有名なことばですが、
ものの光がみえた瞬間、間髪入れずに句にすることの大事さ、
つまり、直観力と瞬発力の大事さを説いています。
これはもともとは連句の附合の際の心構えのことをいっているのですが、
俳句にも言えることですし、
選句の際の心構えとしても当てはまることだと思います。
対面句会の選句では、清記された紙が順々に回ってきます。
たとえば東京句会では1枚の紙に5句ずつ清記され、それが順々に回ってきます。
1枚5句のなかから良いと思う句を控えて、すぐに隣に回すのですが、
これは対面句会ならではの選句の形式です。
5句並んだなかから、ものの光がみえた句をすばやく選びとる。
光を感じないならば、すぐに隣へ回す。
一度回した清記は再び読み返すことはできません。
選句は非常に難しい作業です。
経験が必要です。同時に常に新鮮なマインドでいることも必要です。
良い選をすることは、よい句を作るよりも難しいといわれています。
「物の見えたるひかり、いまだ消えざる中に言ひとむべし」
次々に回ってくる清記から、よい句を瞬発的に選びとる。
よく出来たシステムだと思います。
選句力を磨くには、対面の句会のほうが、より鍛えられるのではないかと、
あらためて感じた次第です。
第一句座の特選句から。
美しき大渋滞よ花筏 わたなべかよ
見立ての句。
花筏のすがたを車の渋滞に見立てています。
近代以降、「見立て」の技法は蔑まれる傾向にありますが、
ほんらい「見立て」は日本文化の中核をなす技法です。
(詳しくはまた別の機会に書きたいと思います)
ちなみに「花筏」の語にも、すでに見立てが入っています。
水面に花が散り敷いて筏のように流れていく、あるいは滞るさまをいうわけですから、
水面の「花」を「筏」に見立てていることになります。
「見立て」にも、良い見立て(効果的)と悪い見立て(常套的)がありますが、
この句は良い見立て。
「見立て」により、価値の転倒が起こっています。
美しい「花筏」を「渋滞」に見立てることで、
ほんらいマイナスイメージの「渋滞」ですが、
「美しい渋滞」というものがあるのだと、認識を一変させてくれます。
(続きは明日)
0コメント