句集『蕾』 一粒一粒の砂のように
「りいの」(主宰・檜山哲彦)2020年5月号にて、昨秋刊行の拙句集『蕾』を取り上げていただきました。
【「一粒一粒の砂のように 大谷弘至句集『蕾』」:南恵子】
心より御礼申し上げます。
取り上げていただいた句からいくつか。
日本に何もなきころ卒業す
日本が驕りゐしころ卒業す
音一つ大きく割つて寒卵
夜は秋ますほの小貝手にとれば
のこされし杖は枯野の音したり
句集名『蕾』は「寒雷」復刊号(昭和二十一年九月発行)の加藤楸邨の文章からいただいたものです。句集「あとがき」にも紹介していますが、あらためてここで紹介したいと思います。
どんなに苦しい現実でも、一歩一歩ゆたかに踏み出したい。
つまさきで探りあてる一粒一粒の砂のやうに、一句一句を生み出したい。
現実はよし荒野であっても心に花の蕾をもちたい。(加藤楸邨)
第二次世界大戦直後の荒廃のなか、俳句結社誌「寒雷」を復活したときの文章です。
終戦によってひとすじの光明がさしはじめたとはいえ、まだまだ世界中のだれもが生きていくのに必死で、文化や芸術どころではなかったころに書かれたものです。
楸邨のことばは時代を超えて、新型コロナに苦しむ現在のわれわれの背中を力強く押してくれるものではないかと思います。
おこがましいですが、『蕾』もまた、読んでくださる方々にとって、少しでもそのようなものであってくれればと願うばかりです。
『蕾』ですが、版元の花神社が会社をたたみましたので、現在、「古志」にて取り扱っています。購入ご希望の方は下記をご参照ください。残部僅少です。
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