半歌仙「雪ちるや」の巻 連句解説 1

「古志」12月号の特集は「雪と歌仙」でした。


半歌仙「雪ちるや」の巻を掲載しましたが、


今回はその「雪ちるや」の巻をかんたんに解説していきます。

半歌仙「龍門の巻」(4月号)、半歌仙「庵の月」(9月号)につづき、


今回も半歌仙です。(18句連ねたもの)


すでにある一茶の句を発句(第一句)にして、


脇(第二句)から開始しましたので、「脇起こし」の半歌仙となります。


捌きはわたくし大谷。


連衆は「古志」YouTube句会で募った有志です。


巻くにあたっては、YouTubeのライブ機能を用いました。


まず発句(第一句)。


雪ちるやきのふは見えぬ借家札   一茶


とある家の玄関先に借家札が貼られていたというのです。


なんの前触れもなく、あわてて引っ越した様子が伝わってきます。


じつはこの句を発句に一茶も半歌仙を巻いています。


文化11(1814)年11月3日のことなのですが、


この年、一茶は江戸を引き払い、信濃へ帰住していますので、


どうやらこの借家札、一茶自身の家のことを詠んでいるようなのです。


それまで自分が住んでいた家のことを詠んでいるわけです。


そして半歌仙も一茶惜別として江戸の友人たちと巻かれたものでした。


この句、まえがきに「石の上の住居のこころせはしさよ」とあります。


樹下石上」を崩して引用して、


ひとところに落ち着くことができない境涯を嘆いているわけです。


ちなみに一茶たちの半歌仙の脇句は、


楢に雀の寒き足音   成美


良き兄貴分であった夏目成美が付けています。


一茶といえば、雀のイメージがありますが、


江戸を去りゆく一茶の足音が重なって聞こえてきます。


今回はこうした背景をもった句を発句に立ててみました。


というわけで、脇(第二句)です。


寒も明けぬにほのと梅が香  弘至


わたしが付けました。


庭に残された梅の木が早めの花を開こうとしている様子にしました。


発句との響き合いで、雪が残っているようすなども


想像してくださるとありがたいです。


雪ちるやきのふは見えぬ借家札   一茶

 寒も明けぬにほのと梅が香    弘至


脇は発句に寄り添い、発句を引き立てることが大事ですが、


発句がわびしい句でしたので、明るさを添えたいという思いで付けました。


一茶の〈梅が香やどなたが来ても欠茶碗〉も念頭に置いたものです。


第三ですが、大きく転じる必要があります。


鳶の輪をいくへに空は深むらん   隆子


発句と脇が家と庭で完結していましたので、


そこから大きく景が展開しました。


 寒も明けぬにほのと梅が香    弘至

鳶の輪をいくへに空は深むらん   隆子


この句が付くことによって、前句はどこか海岸あたりの野梅のように読めると思います。


以上、発句から第三でした。


続きはまた明日。








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