「古志」郵便句会(9月)を終えて
遅くなりましたが、9月の「古志」郵便句会から特選句をいくつかご紹介します。
オンライン句会に参加できない方々のための句会です。
庭石も枯らすつもりか藪枯らし 上俊一
じっさいには石が枯れるということはないですが、
だからこそ詩になるわけです。
藪枯らしの旺盛な繁茂力からすれば、
あながち大げさでもありません。
(Photo by Rachel Cook)
大夕焼海の底より煮え返り 山下充子
〈底より煮え返り〉という表現がすごいですね。
大海原と大夕焼けを表現するには、
これくらい雄大に詠むくらいがちょうどいいですね。
そうでないと形になりません。
こちらもじっさいには煮え返ることはないですが、
ことしの夏の尋常ではない暑さをしっかり表現していると思います。
鈴虫にうつらうつらや仕舞風呂 北野沙羅
外の鈴虫の声にいざなわれて、
つい、うつらうつらと眠り落ちそうになっている様子。
〈仕舞風呂〉の情緒が奥行きをもって描き出されています。
静かな秋の夜です。
うつろはぬいのちひととき花氷 関君子
あらゆるものはうつろっていくのですが、
今この瞬間だけ、花は氷の中に美しく閉ざされて、うつろうことはない状態。
とはいえ、それも〈ひととき〉のこと。
刹那的で儚い花の姿を描いています。
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