「古志」郵便句会(7月)を終えて

遅くなりましたが、7月の「古志」郵便句会から特選句をいくつかご紹介します。


「古志」郵便句会はオンライン句会に参加できない方々のための郵便による通信句会です。

(Photo by pariwat pannium


これからの我すむ部屋ぞ風涼し  梶原一美


引っ越しをされたのでしょう。


ご高齢になると、引っ越したり環境が変わったりすることに億劫になりがちなのですが、


この句はじつにポジティブに詠まれています。


タイプは違いますが、


これがまあ終の栖か雪五尺   一茶


一茶が故郷の柏原に帰住したときの句を思い出させます。


作者の梶原さんは愛媛から北海道に引っ越しをされています。


句会では名前が伏せてありますので、


選をした段階ではわからないのですが、


作者の境涯と重ねて詠むと、いっそう味わいが増します。


北海道の夏の涼しさへの感動から生まれた一句なのかもしれません。


すれ違ふ影は卑弥呼よ月見草   山下充子


幻想的な一句。


夜闇のなか、すれ違った影は卑弥呼だったというのです。


「月見草」という夜に咲く花を取り合わせたことで、


おのずから夜の情景になりますし、月のおもかげも感じられます。


また、一晩だけ開く花という、そのあわれさが、


卑弥呼の伝説的な人物像とうまく響き合っています。

(Photo by james jeon


そのうえで、作者の境涯を重ねて読んでみると、


この句が生まれた背景が見えてきます。


作者の山下さんは福岡にお住まいです。


邪馬台国の場所はいまだ特定されていませんが、


福岡は関西についで有力視されています。


卑弥呼の幻影。


それは作者の邪馬台国へのあこがれが生み出したものではないでしょうか。




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