「古志」郵便句会(4月)を終えて

前後してしまいますが、


4月の「古志」郵便句会から特選句をいくつかご紹介します。


「古志」郵便句会はオンライン句会に参加できない方々のための通信句会です。


ありがたや八十路そろつて昼寝して    山下充子


飾りのない表現ですが、それゆえにしみじみと思いが伝わってきます。


特別、何をするでもなく、昼寝をしているわけですが、


だからこそ、日常のありがたみ、


あたりまえのことをあたりまえに享受できるありがたみが、


素直に感じられる句です。


人生百年時代とはいえ、


夫婦揃ってつつがなく八十代を迎えるということは、


だれもが望むことかもしれませんが、だれもが叶うわけではありません。


そんな平穏な日々のありがたみを噛み締めつつ、


残された二人の時間を大切にするような昼寝姿です。


一日でも長く、このつつがない日々が続くことを一読者として願うばかりです。


冥土への境うろうろ花見かな       春日美智子


一転して、こちらは穏やかではない空気感ですが、


老いの哀感がユーモラスに描かれています。


古来より桜は背後に死を感じさせる花でありますが、


それをシリアスに描くのでも、無駄に格好つけて描くのでもなく、


ありていの姿で描いてあります。


老人がウロウロと桜の前を歩いていると、


さながら冥土との境をいったりきたりしているようだとシニカルに詠んでいるのです。


もちろん老いた人に限らず、桜に浮かれた若者の姿と読んでもよいと思います。


いずれにしても不穏な空気を漂わせた諧謔句です。


桜といえば、

写真は5月5日に信州柏原で撮ったものです。


一茶の故郷です。


例年ならばGWでも桜の花見ることができるのですが、


今年はすっかり散ってしまっていました。


ただ、一茶の句碑が残る諏訪神社にはまだ花が残っていました。

松蔭に寝て喰ふ六十餘州かな  一茶


一茶の句碑は今では全国にたくさんありますが、この句碑が最初のもの。


一茶の三回忌に建てられました。


諏訪神社は一茶の生家のすぐ近くにあります。


一茶が歌舞伎や相撲を見物をして楽しんだ場所です。


今年はもう見ることはできないと思っていた桜でしたが、


奇しくも一茶の誕生日に、


ありがたく眺めることができました。


明日から信州柏原の風景をご紹介します。


ぜひ御覧ください。

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