半歌仙「庵の月」の巻 連句解説 5

昨日の記事の続きです。


「古志」9月号掲載の半歌仙「庵の月」の巻の解説です。


初折の裏、第二です。


 決闘見守るおめかしの美女   淳子


恋の三角関係をイメージします。


一人の美女を取り合って決闘している様子です。


夜会服アンドゥトロワで躓いて  りえこ

 決闘見守るおめかしの美女   淳子


前句の夜会からベタ付けであはありますが、


なんとか恋の句が付きました。


わたし自身もそうですが、


俳人はあまり恋の句は得意ではないですね。


もともと連句における恋の句は、


あらわに詠まなくても良いものとされていますが、


今回の恋の句のくだりは、


もっと暴れてもよかったかもしれません。


第三ですが、恋を離れます。


叫びつつ枯野さまよふ王ひとり   嘉子


リア王を思わせるような句です。


なにもかも失ってしまったかのよう。「枯野」で冬。


夜会服アンドゥトロワで躓いて   りえこ

 決闘見守るおめかしの美女    淳子

叫びつつ枯野さまよふ王ひとり   嘉子


あらためて読んでみると、


このあたり、中世ヨーロッパのイメージで続いてしまった点が、


捌きとしては反省点です。


人事句が続き過ぎている点もいささか気になります。


続いて第四ですが、


 音もかすかに榾はくづるる   隆子


ここで叙景の句です。「榾」で冬。


 決闘見守るおめかしの美女    淳子

叫びつつ枯野さまよふ王ひとり   嘉子

 音もかすかに榾はくづるる    隆子


この句でいったん流れが落ち着いた感があります。


続きは明日。


どうぞよき日曜日をお過ごしください。

大谷弘至 official site

俳句「古志」主宰 和光大学俳句部顧問

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